ある高名なピアニストの息子が某国営放送のオーケストラと共演した時のことである。その日はよくミスるメガネでサラリーマン風のホルン奏者だったので、はじまる前からたぶんやるだろうなあとおもっていたら、案の定ミスった。いきなりしらけたムードになってしまった。聞いてる方がそれでも別に問題はない、忘れてしまえばいいのだから。しかし、その日はピアニストがしらけてしまったようだった。1楽章と2楽章は、すてばちな演奏というかイヤイヤ弾いてるって感じというか、もうやめてくれーといいたくなるような、席を蹴ってはやくうちに帰りたくなるような演奏だった。ところが3楽章になると一変した。3楽章はチェロの優しいメロディーのソロからはじまる。このソロは非常によかった。このチェリストは真ん中分けで坊ちゃん風なのだが非常に才能がある人のようだ。以前、ほかの曲でもすごく熱演しているのをみて感動したこともあった。いくらしらけたムードの中でも自分の最高のパフォーマンスを聞かせる、これがプロってもんだといわんばかりの演奏に聞こえた。このソロからピアニストのタッチが激変した。もっとも3楽章4楽章は激しい前半とうってかわって非常に穏やかな曲調となるのであたりまえといえばあたりまえなのだがあきらかに違った。まるで改心したかのようにピアニストが真摯に弾いているように感じた。これで救われた。後半は気持ちよく聞けた。演奏終了後にピアニストがチェリストに握手を求めていた。私の想像もそう違っていないのではないかと思った。
ゲアハルト・オピッツというピアニストの演奏についても書いておきたい。その演奏会は先日温泉施設が大爆発した所にほど近いコンサートホールであった。 この日の演奏会でも冒頭のホルンがミスった。その時、オピッツは一瞬エッーとあきれたような表情をした。しかし、演奏はとてもよかった。人格ができているというのかな、さすがにプロという感じだった。つい先日BSハイビジョンでブラームスの晩年の小品を演奏しているのを見た。地味な曲だが実に味わい深く演奏していた。
アンブシャをつくり・・特に小さい音のピアニッシモなら、さらに緊張する・・腹筋を緩やかに閉め・・のどを開き僅かな単一量の空気を唇に・・その振動がマウスピースに伝わり・・柔らかなホルンの澄んだ音が響くはずだった・・・あちァー(ハズシタ)アンブシャ少し変えて・・やっと出た・・この音だ・・ドキドキ・・頭、真っ白・・これは素人ダ・・やはりプロはビシッと決めなければ・・お金払ってきているしね・・と・訳のわからないことを書いてしまったのでした。