「3C273」までの距離は25億光年。光が25億年かかってやっと届く距離である。今見えている光は25億年前の光ということになる。25億年前というと、地質時代では先カンブリア代である。 地質時代はその当時の地球の生物が栄えた時代で区分されている。新しい順にいうと、ほ乳類の栄えた新生代、恐竜がいた中生代、原始的な生物が発達していった古生代。先カンブリア代はバクテリアみたいなものしかいなかった頃である。
小石原についたときは素晴らしい透明度であったが、「3C273」の位置するおとめ座はまだ低く、しばらくは春の系外星雲などを観望した。その間、徐々に雲が出てきた。おとめ座が登ってきた頃にはかなり悪い状況であったが、自分で作った詳細な星図をたよりに「3C273」があるはずの位置にクノイチ400の視野を導入し、きれいに晴れ上がるのを待った。待つこと10分ほどでようやくそれらしい「点」が見えた。ほんの一瞬だった。間違いないか写真と比べて確認しようとしているうちに曇ってしまった。また、次回確認することとしてその夜は引き上げた。
たかが「点」にしか見えなかったけれども、私にとってはかなり意義深い星見であった。それにしても25億光年も遠いのに12.9等も明るさがあるとはちょっと考えるとすごいことである。我々の銀河よりも数万倍くらい明るいのだそうだ。恒星でも銀河でもない不思議な天体。とてつもなく遠くて超巨大な天体。宇宙は謎だらけということをあらためて認識できて楽しかった。